日本の夜には、静かなリズムがあります。
湯気の立つお風呂、畳の上の布団、やわらかな灯り。
眠る前の小さな「ひと手間」を大切にする文化は、忙しい毎日の中で、自分を整える時間でもあります。
今夜は、日本人の“おやすみ前の習慣”をのぞいてみましょう。
湯船につかる ― 眠りのスイッチを入れる時間
日本の「お風呂」には、清潔さだけでなく“心を落ち着かせる”という意味があります。
熱すぎない湯にゆっくりと肩までつかると、体の深部温度が一度上がり、その後ゆるやかに下がるときに眠気が訪れます。
シャワーだけでは得られない“脱力の瞬間”。
湯気に包まれながら、「今日もおつかれさま」と自分に声をかける――その穏やかな時間が、眠りへのやさしい橋渡しになります。
香りと灯りで“夜の空気”をつくる
眠りの質を高めるために、照明を少し落とし、柑橘系やラベンダーなどのアロマを焚く人も増えています。
日本では古くから「香」を用いて心を整える習慣があり、お香や線香の香りとともに立ちのぼる煙も、どこか“静寂”を象徴するものです。
強い光を避け、やわらかな灯りのもとで過ごす数分間。
スマートフォンを閉じて、“夜の空気”を感じるだけでも、体と心が眠る準備を始めます。

布団を敷く ― 眠りを迎える小さな儀式
かつて日本の家では、夜になると畳の上に布団を敷き、朝には畳んでしまうのが日常の光景でした。
最近ではベッドが主流になり、「布団を敷く」という行為をする機会は少なくなりましたが、どこか懐かしい思い出として心に残っている人も多いのではないでしょうか。
田舎のおじいちゃんの家で、家族みんなで並んで寝た夜。
旅館の和室で、仲居さんが布団を敷いてくれたときのあの安心感。
そんな体験には、不思議と“休息の記憶”が宿っています。
部屋が一瞬で「眠る場所」に変わるその瞬間――それが、心を自然に休息モードへ導く小さな儀式なのです。
朝には畳んでしまうからこそ、夜に敷かれたその布団には、“今日を包み込む静けさ”が宿っています。
夜を整える、日本のやさしいかたち
フィンランドのようにサウナへ行かなくても、スペインのように昼寝をしなくても――日本の夜には、日本らしい整え方があります。
湯気、香り、布団の手触り。
どれも小さなことですが、ひとつひとつが「自分をいたわる習慣」です。
今日も一日の終わりに、あなたらしい“ひと手間の眠り”を。
(文・熟睡アラーム編集部)
おやすみの国めぐり
第一回 サウナと眠りの国 ― フィンランドの夜に学ぶ“ととのう眠り”
第二回 昼と夜、2回眠る国 ― スペインの“シエスタの知恵”
睡眠にお悩みなら試してみてください